2026.03.13
【Laboratory】無機質と有機質が溶け合う「空洞」の立体刺繍|刺繍の概念を覆すテクスチャ研究
タナベ刺繍の実験場「Laboratory」へようこそ。今回は、一見すると「本物の手編みニット」や「複雑なコラージュアート」に見える、最新の立体刺繍作品をご紹介します。実はこの作品、手に取った瞬間に誰もが声を上げるほどの「驚き」が隠されているんです。
目次
作品の基本情報
| 技術名称 | 溶解芯材による空洞立体刺繍 × レーザーカット異素材融合 |
|---|---|
| 使用素材 | ベース:綿・ウール / 貼り合わせ:ポリエステル(ベロア・サテン) |
| 刺繍糸 | 特殊毛糸(多重往復ステッチ) |
| 装飾 | 3mm/5mmスパンコール(立体留め)、竹ビーズ(手刺繍) |
「気づかないほど自然」な、無機質と有機質の融合
この作品の最大の凄みは、綿やウールといった「有機的な天然素材」と、ポリエステルのベロアやサテンという「無機質な化学繊維」が、まるで一つの生命体のように完璧に馴染んでいる点にあります。
あまりに自然すぎて通り過ぎてしまうかもしれませんが、質感のまったく違う素材同士を境界線なく溶け合わせる表現は、精密なレーザー技術と計算し尽くされた刺繍設計がなせる技。タナベ刺繍の真骨頂とも言える「素材の再構築」です。
技術のポイント
1. 芯材を「溶かす」ことで生まれる究極の柔らかさ
通常、これほどのボリュームを出すには重厚な芯材が必要ですが、私たちは発泡スチロールや水溶性不織布を刺繍に挟み込み、後からそれらを溶解させて「空洞」を作り出しています。
溶けた芯材の厚みがそのまま立体の高さになりつつ、芯がないため仕上がりは驚くほどソフト。チュールのような伸縮の激しい繊細な生地でも、歪みなく美しく刺繍することが可能になりました。
2. 刺繍ミシンで描く「本物のニット」の質感
通常の刺繍ミシンでは使用されない「毛糸」をあえて採用。糸を何往復もさせてボリュームを持たせることで、刺繍でありながら「本物の手編みニット」に見える質感を創出しました。サガラ刺繍やコード刺繍を使用せずとも、ここまでの温かみと立体感を表現できるのは私たちの誇りです。
3. ミリ単位で制御する光の陰影と手仕事のぬくもり
3mmと5mmのスパンコールを使い分け、さらに留め糸自体を立体的に立ち上げることで、装飾に彫刻のような奥行きを与えています。また、複雑な形状の竹ビーズは一粒ずつ職人が手作業で縫い付けており、最新テクノロジーと伝統的な手技が高度に融合しています。
タナベ刺繍ならではの強み
- 無機質と有機質という相反する素材をシームレスに繋ぐ、圧倒的な「素材融合力」
- 「刺繍=硬い」という概念を覆す、溶解芯材による空洞構造とソフトな肌触り
- 刺繍に向かない毛糸を使いこなし、ニットの風合いを完全再現する技術の深さ
- デザイナーの「ありえない」を形にする、ぶっ飛んだ企画開発体制
想定される用途
- ハイブランドのコレクションライン(ドレス、アウター、バッグ)
- 伸縮性と軽量化が求められるニットウェアやスポーツラグジュアリーへの装飾
- 視覚(重厚感)と触覚(柔らかさ)のギャップを活かした体験型アート
- 繊細なチュールやレース素材への、これまでにない立体的な付加価値提供