2026.03.12
刺しゅうでニットを創る。80年代インターシャを再現した「立体刺繍」の挑戦
一見すると、温かみのあるニット製品のように見えますが、実はこれ、すべて「刺繍」で表現されています。今回は、タナベ刺繍のLaboratory(実験室)から、80年代に一世を風靡した「インターシャ柄」を最新の立体刺繍技術で再現したプロジェクトをご紹介します。

| 技術名称 | 立体刺繍(ニット表現・インターシャ再現) |
|---|---|
| 使用素材 | ウールアクリル糸(毛糸) |
| 主な特徴 | 芯地溶解による糸の自立、圧倒的な柔らかさ |
目次
刺しゅうの概念を覆す「ニット表現」
通常、刺繍は生地の上に糸を密着させて図案を描くものですが、本作では「刺繍によってニットのテクスチャそのものを創り出す」ことに挑戦しました。80年代のインターシャ編みを彷彿とさせる複雑な色の切り替えを、ジャガード刺繍の運針のみで緻密に再現しています。

平面の生地の上に、突如として現れるニットの質感。プリントでは決して出せないこの実在感こそが、タナベ刺繍の「ぶっ飛んだ企画力」の真骨頂です。

「芯地を洗い流す」ことで生まれる糸の自立
この圧倒的な立体感の秘密は、縫製プロセスにあります。まず生地の上に1mm〜3mmの特殊な芯地を乗せ、その上から刺繍を施す「芯地ホールド」技術を採用。これにより、薄手の天竺地であっても生地を傷めず、フラットな状態を保ちながら高密度の縫製が可能になります。

縫製完了後、独自の「洗浄・溶解プロセス」によって芯地だけを丁寧に洗い流すと、土台を失った糸の束だけがそのままの形で「自立」します。芯材を一切残さない「引き算の工程」を経ることで、見た目のボリュームからは想像できないほどの「圧倒的な柔らかさ」が生まれるのです。
扱いが難しい「毛糸」へのこだわり
使用しているのは、一般的な刺繍機では扱いが難しいとされる「ウールアクリル」の毛糸です。摩擦に弱く、糸切れが起きやすいこの素材をあえて選択し、洗浄後の膨らみまで計算してステッチを施します。

機械刺繍の常識を超え、素材のポテンシャルを最大限に引き出す。そこには、東かがわ市の職人たちが受け継いできた「すべてに応えたい」という執念と、人間味あふれる試行錯誤が詰まっています。

タナベ刺繍が提供する技術的付加価値
- 芯地ホールド技術:あらゆる生地をフラットに保ち、スッキリとした高級感のある仕上がりを可能にします。
- 究極の柔らかさ:芯地を溶かし切ることで、肌に触れても違和感のない、衣料品としての完成度を高めています。
- 歴史の再解釈:80年代のインターシャ柄というレトロな記号を、最先端の刺繍技術で現代のファッションへとアップデートします。
想定される用途
- ハイブランドのスウェットやTシャツへのアーティスティックな装飾
- ニットの質感を部分的に取り入れた異素材ミックスデザイン
- 触覚に訴えかける、プレミアムなノベルティやプロダクト
タナベ刺繍では、これからも「驚きと感動」を届けるため、刺繍の可能性を広げる実験を続けてまいります。